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あの日、鬼平先生は何を食べたか―池波正太郎フランス旅日記 (生活人新書 244)

『1980年代前半のフランス』
他人の旅行記などはたしてどれくらい意味があるのかという疑問にも関わらず、この作品はなかなかおもしろいです。それにはいくつかの理由があります。まず無駄な名所旧跡案内と自慢話が皆無で、一日の具体的な諸事実に描写が限定されている点です。次に、貧乏旅行ではなく贅沢な旅行で2?3週間をかけて(旅費は当時の金額で400ー700万円、ドル円レートは250円ぐらいか)、フランス全土(南仏は含まれていない)をドライバー付で車で回っている点です。第3に食通として有名だった池波正太郎のフランス滞在中のすべての食事が、飲んだワインの種類とデザート(!!!)も含めて細かく記録されている点です。偶然にもヌーベルフレンチの前のフランス料理の時代がここには再現されています。第4にここには1980年代前半のフランスの姿が浮かび上がる点です。私たちから見ると余り変わっていないように見えるフランスも確かに変貌しています。いくつかの店やホテルはもうなくなっているようですし、今では欠かせない外国人労働者の姿もこの記録の中には現れることはありません。そして今とは違い英語はほとんど通じないようです。しかし最大の驚きは、池波正太郎の食欲です。2?3週間連続で、これほどのフランス料理の美食(時々中華料理が入りますが)を続けることができたというのは、体力と食欲です。日本にもそういう時代があったんですね。

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