『貴重な1枚』
ここに収められた「港が見える丘」と「君待てども」の2つが、日本の歌謡曲の長い歴史の中でも、曲・歌唱ともに最高の作品に属すると考えているのは、もちろん私だけではあるまい。このほか、このCDには、”若きブルースの女王”と呼ばれたこの名歌手が最も輝いた時代の、多くの作品が収録され、しかもその大部分は、今日ほとんど耳にできない貴重なものである。
さらに、このCDのもう一つの値打ちは、ブルース調以外の曲にも、彼女の多彩な魅力と可能性が感じられる逸品が含まれていることだ。中でも、「霧の中の女」(パソ・ドブレ?)は、ネオン街の情感にあふれ、平野愛子究極の魅惑的なディクションと美声を満喫できる。また、珍しくアルゼンチン・タンゴスタイルの、「幻の港」も聴き逃せない。ここでは平野は、楽団の熱演にはさまれたワンクールだけを、本場のリフレイン歌手風にさらりと歌いこなしている。