『凄い作品なのでしょうが…』
通常の映画は,いくつかのテーク(シーン)をつなげて一本の作品に仕上がるという手法で制作されますが,本作の場合は,96分間1テーク,つまり,1時間半以上も途切れることなくカメラを回し続けた作品です。
韓国のチョンジュ映画祭が毎年三人の映画作家にデジタル短編映画を委嘱する「三人三色」という企画があり,その一環としてソン・イルゴン監督が撮った40分程度の短編作品のロングバージョンだとも言われていますが,談話の中で「容易でない撮影だった。どんな作品になるのか私たちも俳優たちにも分からなかった。35ミリのカメラでは重すぎて1時間半もの間支えきれないから,胸の部分に設置できるステディーカムのビデオカメラを使った。セットは屋外から屋内まで広く,木の間をすり抜けて撮るのが苦労した。」と話しているように,監督は最初から本作の方に主眼をおいていたようです。
「マジシャンズ」とは,バンドの女性ギタリストだったチャウン(イ・スンビ)が窓から飛び降りて自殺した後に解散したバンドの名前です。
彼女の命日となる大晦日の夜,残ったメンバー,ジェソン(チョン・ウンイン)とミョンス(チャン・ヒョンソン),ハヨン(カン・ギョンホン)は3年ぶりに江原道(カンウォンド)のカフェで再会し,共に過ごした青春の日々を語らいます。
そこに、自殺したはずのジャンウが現れますが,彼らには見えません。
扉のない部屋を行き来するように現在と過去が巧みに入れ替わり,かつての素晴らしかった日々を思い起こしながら,彼らは再び歌い始めようとします。
キャストは,バンドのメンバーにお坊さんを加えた5人だけ,役者が一本撮りに耐えるだけの力量を持っていなければ到底完成しなかった作品ということで,凄いといえば確かに凄い作品だとは思いますが,結局何が言いたかったのか私には理解できませんでした。