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室井佑月

熱帯植物園 (新潮文庫)

『芥川賞に値するぞ』
室井佑月が最もその才を発揮するのは、「女であること」を書く場合であると私は思っている。
女であることのどうしようもない切なさ、痛さ、烈しさ、執念。それを狂気じみた作風で、リアリティと凄みを確かに持たせて描ける。これは彼女の“作家”としての才ではなく、“室井佑月”という業(ごう)によるものだ。本書の表題作「熱帯植物園」にはそれが顕著に表れている。
倦怠感の中に潜む破壊衝動。諦めの中にある請い。そういった相反するものを室井氏は持ちあわせている。ストーリーが非日常的なもののため要約して説明することは難しいが、たとえばラストの、燃えさかる火の中でヒロインがダンスするシーンなどは心理的に妙なリアリティを孕んで迫ってくるものがある。生理が止まっていたのに、思い出したように流れる血。火や血などの「赤」を直感的に想像させるマテリアルを使いながら、女であることの烈しさや痛さ――つまり、心理的な部分を表現する。読み終えた時は、まるでその火の中に自分がいるような感覚さえ覚えるほどの臨場感があった。余韻にしばらく呆然となった。
完全な純文学だと感じた。

ちなみに本書は氏のデビュー作である。これほどの作品ならば、芥川賞になってもおかしくなかっただろうと私は思う。作品の完成度云々より、これほど読み手に伝わる感情があるということは大いに評価されるべきだ。

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